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スティーヴ・カレル（以下、スティーヴ）： 「正直、この役を受けることに対して少し二の足を踏んだよ。ドラッグ中毒を扱った映画での一番の不安は、いつものハリウッドの手法になってしまって、本当に起きたことを描かないんじゃないかということだった。しかしこの脚本は残酷なまでに正直だった。英雄も敵役も存在しない。我々が生きているこの世界を描いていたんだ。」

ティモシー・シャラメ（以下、ティモシー）： 「僕は、オーディションを受けたんだ。どうしてもこの役がやりたかったから。フェリックス・ヴォン・ヒュルーニンゲン監督の『オーバー・ザ・ブルースカイ』はエモーショナルで素晴らしかったからね。感情で胸が一杯になってしまうような映画だった。この映画も非常にエモーショナルで、感情をむき出しにしたような映画だ。それは監督が、映画を作る時に、人間を元にしていて、人間の感情というものを大事にしていて、それを中心に描く人だからだと思うんだ。」

—モデルとなったデヴィッドとニックにも会ったのですね。

スティーヴ： 「僕らは撮影前に、少し一緒に時間を過ごしたよ。でも、僕は、そのミーティングを、いかにもリサーチのため、というふうにはしたくなかったんだよね。話している最中に科学の実験台のように“自分は観察されている”とデヴィッドに感じてほしくなかったんだ。僕が願ったのは、気軽におしゃべりをしながら、彼はどういう人なのか、その雰囲気をつかむこと。彼が書いた本から僕が想像していたとおり、とても親切で、頭が良くて、温かい心を持った人だったよ。」

ティモシー： 「実在の人物を演じるわけだから、ものすごく不安もあったし、責任も感じていた。だけど、ニックに会った時に、彼はこれまで様々な経験をしてきているわけだけど、優しくて、知的で、寛大な人だった。心を開いて自分の体験を語ってくれたから、すぐに不安からは解放された。それがなかったら、実際に体験していない僕とスティーヴが完全にリアリティを理解するのは無理だったと思うな。だから、ニックにはものすごく感謝している。それに彼らは素晴らしい家族でもあるんだ。そんな彼らを見ていて、家族の愛こそが、僕らみんなを結束させると気付いたし、この映画の大事なテーマも家族の愛だと思ったんだよね。」

—お互いとの共演はいかがでしたか。

ティモシー： 「フェリックスは、撮影前に、僕らにできるだけ多くの時間を一緒に過ごすようにと言ってきた。ジャスパーとデイジーを演じる子役たちもだ。スティーヴからは、すぐに、心を癒してくれるお父さんの雰囲気を感じたよ。実は僕は彼の大ファンだったんだ。とくに『フォックスキャッチャー』と『マネー・ショート 華麗なる大逆転』、は、大好き。だから、実際に会う時、ファンとしてふるまわないように気をつけたよ。７年間もテレビで見ていた「ザ・オフィス」も大好きで、映画の撮影が終わった後に、実は見直してみたんだ。絶対に変な気分がするかもと思いながらね。でも、『あの2人が今は僕の両親なんだ！わーい！』って思った（笑）。そんなわけで、今はスティーヴが本当に自分の父親のようにすら感じるんだ。」

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—監督とのお仕事はいかがでしたか。ベルギー人である彼が英語で映画を撮るのは、これが初めてだったのですが。

スティーヴ： 「僕は彼の『オーバー・ザ・ブルースカイ』を見ていた。そして、すばらしいセンスを持つフィルムメーカーだなと思っていたよ。今作にぴったりの監督だとも思った。物語を映像でどう描けばいいのかを熟知しているからね。彼はすごく美しい映画を作っているが、彼が映し出すものには隠喩や皮肉が込められている。彼は自分のやりたいこと、特にデヴィッドとニックにやらせたいことを明確に描いていた。決して楽な方法を取ろうとしない。彼のモットーは“正直”って言葉だろうね。」

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—ダイナーで父と対面するシーンは緊迫した感動的なシーンですが、あのシーンの撮影はどのようなものでしたか？監督によると20テイクもしたそうですが、それは本当ですか。

ティモシー： 「（笑）そうなんだ。あのシーンの撮影は、まだ撮影が開始してから3日目くらいだった。僕と、スティーブを、捉えるカメラが別々にあったから、2人が同時に演技をすることができた。普通は1人の表情を撮って、その受けの演技を別に撮ることが多いけど、あのシーンはそうじゃなかったんだ。それが良かったと思う。それに、僕はそうやって役者と役者が直面するシーンがとりわけ好きなんだよね。だから、あのシーンも映画の中で一番好きなシーンのひとつになったよ。父に『愛している』と語りながらも、彼が何と葛藤しているのが象徴されているんじゃないかと思うんだよね。」

—スティーヴ、あなたも2人の子供の父親ですが、この映画の状況をどう思いましたか。

スティーヴ： 「恐ろしいよ。こんなに恐ろしい状況を、僕は想像することもできない。わが子の命が危険にさらされているというだけでも最大の恐怖なのに、本人がそれを変えようとしないんだ。それができないんだよ。そこが最悪。子供たちは成長していくもので、その過程で新しい発見や経験をしていくうちに落とし穴に落ちる危険もあるのだということを、改めて認識した。僕はいつも自分の息子ときちんとコミュニケーションをとってきたし、この映画のおかげでもっと話すようになったということはない。もしそうだったら、まずいよね（笑）。でも、今は、ハグする時にももっと強くハグするようになった気がする。自分にはこの子たちがいて、心がつながっているのだという事実に感謝する意味をこめてね。それに、もし、依存症というような難しい事柄について話すことがあった時には、正面から話し合おうとも思っている。」

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スティーヴ： 「それに答えるのは難しいかもしれない。なぜなら、僕は、本作を、何かを説教するような映画にはしたくないと思ってきたからだ。この映画を見たことで何かを受け止めてくれるならば嬉しいけれども、これは教育ビデオでもなければ、ドキュメンタリーでもない。少なくとも、僕は、“大切なことを学べますよ。だからこの映画を見にきてください”とは言いたくない。これは、何よりも、父と子の物語だ。父と息子が一緒に歩いてきた常軌を逸した道のりを描いたリアルな話なんだ。そこに、大きな要素が関わっているというだけ。それに、そういった何かは、幸せな家庭にも起こり得る。特定の状況だけに限られた問題ではない。」

② あやかar 様 専用 「スティーヴが言ったことに、僕もまったく同感だよ。僕も、この映画を人に説教するものだとは思っていないから。ただ、この映画は現代の人達が、特に僕ら世代の若者が対峙している緊迫した問題を反映した作品でもあると思う。だから僕の世代の人達に見てもらいたいと思うし、この病や家族の抱える問題について会話を交わすきっかけになればいいと思う。映画の中で、医者が言うセリフがあるけど、治療をしたいと思っていないのではなくて、それが不可能なんだ、ということ。それを理解してもらいたい。この病については、“意志の力”についての誤解があるような気がするからね。そこから抜け出そうとしない彼が悪い、と決めつける以上に複雑な問題があるんだ。それはドラッグ中毒以外の問題についても同様だと思う。だから、人の葛藤を理解してあげること。そして、家族のサポートと、愛がいかに大事なのかということ。最終的には、家族の愛と忍耐力で、その状況から打破することができると思うから。自分を見失ってどうすることもできない若者というのは、誰もが共感できる普遍的なものだと考えているよ。」